二人は、部屋内で話していたけれど、あまり話が弾まなかった。
リオンは人見知りが激しかったし、アイラはチェルシーが気になっていたのだ。
 彼らはルーティに夕食ができたと言われていたけれど動こうとはしない。
「じゃあ、あたし、部屋に戻りますね?」
といって、部屋を出た時はもうルーティが呼んでから五分ほどたっていた。

「チェルシー、部屋に入るよ」
アイラはそう言ってドアを開けた。
チェルシーはもう泣きやんでいたが目が赤くなっていた。
彼女は芽を吹くとアイラの方へ向き
「ごめんなさい。取り乱してしまいましたぁ」
と言った。
アイラはそれには答えず、
「チェルシー、ルーティさんが呼んでたわよ?行こう」
と言って、チェルシーを無理矢理連れて行った。

彼らが行った「食堂」には、スタン、ルーティ、リオンと孤児院の子どもたちが座っていた。
どうやら、一度に数十人が食事をできる場所になっているらしい。
「ねぇ、チェルシーどこに座ればいいの?」
アイラはチェルシーに尋ねたが彼女は答えなかった。
代わりにルーティが答える。

「チェルシーはスタンの横、アイラはリオンの横でいいわね?」
二人は言われるとおりに座ったがリオンとアイラが話すことはなかった。

アイラは、今日新しく孤児院に来たので沢山質問されていた。
彼女の出身は「ファンダリア」で、もと王国兵。
「ファンダリアに10年ほど住んでたんですけど、セインガルドにあこがれていたんで一度来たんです。
でも、3年後にファンダリアに戻りましたけどね」

その後彼女はセインガルドでなんの職業をしていたか尋ねられたが彼女は答えることはしなかった。

(これを言ったらあたしは、ここを出て行かなければならない!
そしてまたもとの生活に戻るんだわ……)

アイラはそれだけはいやだったので言わなかったのだ。

「ねぇアイラ、アンタファンダリアの出身って言ってたけど、神の眼の騒乱のときどんな感じだった?」

「明確には覚えてないんですけど、グレバムとか言うのがスノーフリアに船で来たんです。
彼らは武力でファンダリア制圧をしようとして剣で戦いました。
あたしは兵士、もとい軍人だったし、そんなに位が高いわけではなかったので、前線で戦いました。
私たちは、国民を守る義務があったのですが、沢山の民間人や兵士が殺されそんなことを考える余裕はありませんでした。
自分が死ぬ前に相手を殺していただけです。もうあの騒乱のときには完全に私の手は麻痺していたのです。
最初に感じていた人を殺す恐怖も感じなくなりましたし。
それほどあの騒乱は私たちを変えたんです。

騒乱が終わった後は、軍隊として街の復旧に取りかかりました。
道には沢山の兵士の死体が転がり、中には民間人のもありました。
負傷者の手当をしたり、被害を受けた建物を無償でなおしたりしていたので、
彼ら一人一人のお墓すらつくることができませんでした。
スタンさん、ルーティさん、リオンさんが見てきたものはどういうものでしたか?」

話題は騒乱のときの話だ。
暗い話だけれどみんなしっかり聞いている。

「オレが見てきたものは、世界の終わりのようなものだ。
グレバムの手に落ちた国はどこも危ない状況だった。
みんなが家に閉じこもって鍵まで閉めて……。
アクアベイルの大王ティベリウスは暴君だった。
国民のことを考えていない王だった。
そして、ファンダリア。
現王ウッドロウの父で賢王と誉れ高いイザークを殺し、
ソーディアンイクティノスを奪って……。

結局俺たちはグレバムと戦った。
神の眼を目の当たりにした時は恐怖が全身からにじみ出てきて……
たかがレンズと言える状況じゃなくなったんだ。

これがオレが騒乱のときに感じたことだ」

次はルーティの話だ。

「あたしはスタンとも少しかぶるところもあるんだけど、
ホントに世界の終わりのような状況だったわね、あのときは。
五カ国全ての問題だったから。
グレバムはファンダリアを武力で制圧しその後
セインガルドと属国フィッツガルドを武力で制圧するつもりだったらしいの。
そこであたしたちが止めたんだからね。

もう見てられなかったわ。
路上には負傷した民間人や兵士の姿。
お金がなくて何も食べられない人たち。
大切な人が亡くなって悲しんでいる人。
あたしたちはそう言うものを見てきた。
アイラ、あんたが言っている戦争なんてかわいいものだわ。
街は破壊され、住めない状態にまでになって……。
ファンダリアのスノーフリアは、アンタが言っているのよりもっとひどかったはずよ。
事実あたしらがスノーフリア入りをした時には負傷者が沢山いたもの。
その中にはグレバム勢もいたわ。

ファンダリアでマリーの夫であるダリスに会ったの。
その時やっと分かったわ、グレバムが何をしたかったのか、ってね。
アイツにもあたしたちと同じく強い信念があった。

戦争って言うのはね、弱いところが武力で制圧されていって、
耐えて耐えて耐えられなくなった時に反発して争いになるの。
それをきちんと分かって」

これが、戦争……。
反発……争い……。

アイラは最後の一人、リオン・マグナスの話を聞く気にはならなかったけれど、
お願いしますと言って話してもらった。

「僕はセインガルド王国客員剣士だった。
セインガルドを守るためにその職業があるのだが、実際はそうではない。
戦争が起きた時には真っ先に前線で戦わされる。

神の眼の騒乱は僕が思っていたよりもひどかった。
あの騒乱で何人の人が命を落としたか分からないんだ。
国の政治力、経済力はないに等しくなり、混乱状態になったんだ。
戦争って言うのは、モンスターと戦うだけではないんだ。
それを分かってくれ」




「ありがとうございました」

アイラはそう感謝をし泣きながら部屋へ戻っていった。


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