リオンは生き延びていた。

ヒューゴの乱でスタンたちと戦い、誰かに助けられたのだ。
本当は、死ぬはずの人間が、ここに生きていると言うことはどういうことだろう?
誰かに、何かされたの?

リオンは今、クレスタの街に住んでいる。ここへは、スタンとルーティにつれてこられた。
この町の孤児院には、スタン、ルーティ、リオン、マリアンの四人が住み込みで働いている。
「リオンーーー。あんたも手伝ってよ。
こっちはこっちで忙しいんだから!」
ルーティがリオンに声を上げて怒る。
よくある光景だ。
孤児院にいる人なら、誰でもみたことがあるだろう。
リオンも怒り、
「僕はガキの面倒なんてみたくない」
と吐き捨て走っていこうとする。

だけど、ルーティが関節技で引き留める。

「お前!い・いてぇぇ」

リオンの悲鳴が響き渡る。

「分かってる?しないと、また関節技よ。
と言うか、でてってもらうから。
アンタの分の食費が浮いたら孤児院の雨漏りを直そうかしら」

リオンは渋々嫌な顔をしながら掃除を始めた。

だがこっそり、リオンは走って逃げ去る。
だけど、ルーティに見つかってしまい、追いかけられた。

バカとアホの鬼ごっこだ。
色気なんてもんは一つもない。

通常は、二人ともかなり色気があるのだけど、ね。

怒っているような風を駆け抜け、走り続ける。後は、どちらの体が先に悲鳴を上げるか、だ。

(もう、ダメか……。それとも……)

リオンの体が悲鳴を上げ始めた。
脇腹は死ぬほど痛く、通常より長く走った足ももう、限界に近づいている。
ルーティはそれをみて一気にスピードを上げてリオンに追いつく。
30代後半になってもパワフルな鬼ごっこを皆に見せつけた二人。
「リオン、何やってんだ。そんなにぜぇぜぇ走って」
リオンの息はかなり荒くなっていた。
棒のように細い体は悲鳴を上げついに倒れ込んだ。
「スタン はぁはぁ……、お前何をする気だ。はぁ…
また、ティアラをつけてやろうか」
ティアラというのは、神の眼の騒乱時に、
スタン、ルーティ、マリーにつけた、囚人監視用の装置だ。
操作ボードを持っている人は、それをつけている人の現在位置が分かるし、電撃を食らわすことができる。
スタンが、リオンを止めている間に、ルーティが到着する。
姉弟二人のにらみ合いだ。
リオンが鞘から剣を出そうとする。
もちろんとった剣はソーディアン、シャルティエだ。
彼が「リオン・マグナス」であり「天下の裏切り者」である以上、持っているのは当たり前なのだ。
彼は、神の眼にソーディアンを刺していないからだ。
ベルセリオスとシャルティエをのぞく他のソーディアンはすべて、それにさして友との別れを惜しんだのに、彼だけしていない。
大切な仲間との別れも惜しんでいない男なのだ。

すると、横でずっと見ていたスタンが話しかけようとする。
だが、はなせるような雰囲気ではとてもない。

(オレは、これを言わないといけないんだ!)

そのまま数分がたつ。
静寂の中では、自然の音がとてもよく聞こえる。

そんな中でもう一度スタンは話しかけようとする。
もう気恥ずかしさも紛れたのか、二人のほうへ向き直り話し始める。
「ルーティ、リオン。お前たちは何をやっているんだ。
孤児院の仕事をさぼって姉弟でけんかしてる暇があったら、とっとと仕事に行ってくれ。
俺が思うに姉弟は仲良くするものじゃないのか?
さらにマリアンさんが困ってるんだ」

そう言われ二人ともブチ切れた。
スタンに言い返すために、ルーティが深呼吸をする。
だけど、なかなか言えない。
自分の言い分は自分にとってはあっているが彼にとっては間違っているのだ。

スタンに言って殴られたらその時はその時だ。
彼女は大きく息を吸った。
そしてゆっくりはいていく。
彼女にとって深呼吸とは落ち着くための唯一の方法であり、
自分の感情を、はっきりと言えるようにするための重要な手段となる。
その手段をようやく終えると、彼女はスタンに向き直る。
そして大きく息を吸って思い切り叫んだ。
その時言ったのは
「スタン、アンタにはわかんないでしょ!
姉弟は仲良くするものじゃないのか?
今の今まであたしはリオンの姉だなんて知らなかったのに!
そんなこと言われて怒るのはリオンも一緒でしょ!」
だ。

ルーティは自分の言い分はあたかも間違ってないように言い放つ。
厳密に言うと二人の言い分はどちらも間違っているしどちらもあっている。
いわいる五分五分な状態なのだ。

彼女の言い分を聞いて何も言えなくなるスタン。
僕もそうだと言いたそうに小さくうなずくリオン。
ルーティはアンタもそうなのねという顔でリオンをみた。
だが、スタンは何も気にせず二人を睨む。

にらみ合う三人。
というか2対1なのだ。
スタンは明らかに不利である。
だけど、こんなことで負けるほどスタンの心も力も弱くない。
神の眼の争乱、ヒューゴの乱の二つの争乱で力を強めたのだ。
けれど、相手にはソーディアンを持っているリオンと、
ソーディアンはもう持っていないが、
レンズで晶力が出せ回復役に徹することができるルーティがいる。

さらに、彼らの元には剣がおいてある。
だけど、ほんとは仲間同士で剣を交えることを好まなかった。
一度仲間だった人と剣を交わしたからだ。
もう二度とあのときの悲しみをおもいだしたくないかれらは、それをすることを拒んだ。

「あたし、剣は使わない。元々平和主義者だもの」

ルーティが剣を投げ捨てる。

「ふん」
リオンが剣を鞘にしまう。

(当分これが続きそうね……)

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